子どもの頃、左に大きな八重歯がありました。八重歯で唇が押し上げられて、口を閉じても歯の先が見えるくらい。八重歯が唇をいつも押し上げていたので、唇と歯ぐきの間に隙間ができていました。その隙間のせいで生活に支障が出るくらい、ということでその八重歯は高校生のころに抜いてしまいました。その歯があったところには人工歯をかぶせて過ごしてきました。
あの大きな八重歯とお別れして三十有余年が経ちました。最近、定期検診で歯医者に行ったところ、人工歯をかぶせたところの調子がよろしくないというので、治療することになりました。歯科医の先生曰く、「八重歯になっていた糸切り歯は歯全体の力がかかる要みたいな歯ですよ」と。それを聞いて「家を建てる者の捨てた石、これが隅の親石となった」というみ言葉を思い出す、歯の治療中も牧師なのでした。
